奈良県議会議員 山下 力
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山下 力 の 活動レポート
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同盟中央への有識者(15名)の「提言」を読んで 2008年01月15日

   

〔1〕「提言」が言うところの「危機的状況」は現実の運動実態とかなりずれているのでは。
 @、「解放の運動主体」とは何を指すのか不明であるが、少な くとも「特措法」制定以降、解放同盟は水平社創立以来、最大の組織形成に成功した。
  もちろん、確固たる運動の主体があってのことである。
 A、しかし、周辺との生活実態面での較差がほぼなくなり、「特措法」が打ち切られて運動体は目標を見失った。ほとんどの支部で日常活動が見られなくなっている。社会的な孤立もさることながら、解放運動は部落内で居場所がなくなっているのでは、と心配である。
 B、わが国社会の生活格差がますます拡大し、部落内でも生活困窮者が増えている。「いじめ」や不登校、児童虐待やDV等々でより充実した取り組みが求められている。「危機的状況」にあるのは運動体の存亡ではなく、子どもや「障害者」、高齢者の生活がどう守られるのかである。

〔2〕 一連の不祥事の背景にあるのは、‘65同対審「答申」路線の破綻である。
 @、われら同盟は’65「答申」を解放運動のバイブルとして信奉してきた周辺地域との生活実態較差を部落差別の証さと捉え、その較差を是正することを行政責任として追求してきたのである。従って、要求の実現(事業の達成)は、即解放の一里塚ということになる。決して本末転倒ではない。“行政要求一辺倒”も“行政依存体質”も「答申」路線の必然の帰結である。「提言」はこの本丸に切り込めていない。
 A、戦後の運動の理論的支柱を担っていた朝田善之助元委員長の“部落民にとって不利益なことはすべて差別に起因している“”差別糾弾闘争を行政闘争に転化せよ”等々の煽動は要求闘争至上主義に強い影響を与えた。
 B、同和対策事業に限ったことではない。公的事業が集中するところに利権屋の類が徘回するのも不可避なことである。とりわけ、土建業界や食肉業界の利権は大きく、暴力団関係者も含めて接近してきた。自主財源(カンパ)の確立を大義名分にして、一部の同盟幹部と業者の癒着がはじまった。また、利権に聡い暴力団関係者も組織にもぐりこんできた。
 C、「特措法」制定以前には運動に背を向けていた部落内の自営業者も企業連の融資や税対策に引きよせられて同盟に加盟した。そこからのカンパが同盟組織の最大の財源となってきた。しかし、事業カンパも含めて財源の詳細は一部の幹部以外には知らされてこなかった。「組織防衛上明らかにできない」だけの説明で済まされてきた。
 D、公営住宅の入居、奨学資金の給付、生活資金の貸付等々同和対策の諸制度は「窓口一本化」の名目で部落解放同盟によって管理運営されてた。この「窓口一本化」という制度管理と企業連組織で同盟は部落の絶対多数を組し、旧来の「部落ボス」にとって代わった。しかし、決して風通しのよい組織体にならなかった。制度利用が個々人と家族をしばり、組織に従順であることを強いてきたからだ。
 E、同和対策事業は、事業融資制度と奨学金制度を除けばほとんど市町村が事業主体になってきた。そして、融資や奨学金も含めてすべての制度利用に「支部推薦」状を原則として添付しなければならない。また、県連や中央本部の役職に就こうとするときも「支部推薦」が要る。支部は資金もある。絶対的な権限をもっている。そして、闘争資金や同和対策諸制度は原則的に情報公開しないことが各支部共通の不文律になってきた。当該の市町村にとっても好都合とあれば、だれがあれこれ詮索できるのか。
 F、一連の不祥事は弁解の余地もない恥ずかしい事態である。しかし、一連の事態の暴露をめぐって自治体側に共通の意図があることも見抜いておかねばならない。一つはゴミ収集業務の民営化であり、一つは同盟組織と暴力団との癒着のあぶり出しである。一連の不祥事の暴露と摘発で世論を味方につけることができたこととこれまで自浄能力を持てなかった解放同盟がいささかの手出しもできないことが立証された。かかる不祥事の暴露と摘発は今後も続くと覚悟しなければならない。

〔3〕 部落解放運動の再生はだれのために必要なのか。
 @、「提言」は委員の見識と情報を縦横に交えながら「危機的状況」から脱する再生の道を模索されている。しかし、もどかしいのは、誰のための運動なのかが定かでないことにある。’93年の総務庁の実施した「実態調査」を思い起こして欲しい。部落民の三人に一人が過去10年以内に部落差別に遭遇したことがあり、その際46%のひとが黙って我慢したと答えていたのである。そして、運動団体に相談したひとが2〜3%しかいなかった事実にこの「提言」は向き合えているのか、疑問である。
 A、“今後とも、部落差別を撤廃していく上で、糾弾闘争が引き続き重要な役割を果たしていくであろう“と「提言」は述べている。糾弾要綱をつくれ、社会性・説得性・公開性の原則を徹底せよ等々の忠告はこれまでも聞いてきた。しかし、言われるところの相互理解にもとづく相互変革がなぜに実現できてこなかったのかが明らかにされていない。部落差別は残存している。けれども、部落問題は国民的課題であるとの認識もかなり浸透してきた。「提言」が指摘しているごとく、いつまでも「部落差別最深刻論」や「差別の痛み論」を振りかざしているときではない。この際、足元をみつめなおして出直すべきでは。部落民もまた差別をする。部落内で女性差別がある。障害者への差別も、ハンセン病やエイズへの偏見もある。昔ながらの在日朝鮮人・韓国人への差別意識もなくなっていない。部落内でどんな対応をしているのかを具体的に示さずして相互理解も相互変革もあったものでもないだろう。この際、これまで展開してきたような個人糾弾はしないと宣言すべきである。
 B、「提言」が指摘するまでもなく、部落解放運動にとって行政闘争の果たしてきた役割は大きい。しかし、その歴史的使命はほぼ終えているのではないか。同和対策として投入された約15兆円にのぼる公的資金とわが国経済の高度成長という追い風に恵まれて、‘65同対審「答申」が指摘していた”中心的課題“がおおむね解決されて、部落の生活実態は周辺地域と較べても遜色のない状況に達している。とはいえ昨今、国民の間にはびこる生活格差が益々拡大し、子や孫の代まで累を及ぼすのではと心配されている。部落も例外ではない。部落内の生活格差が拡大し、生活困窮者が増大している。したがって、今日の部落にも個人的な生活課題や地域課題が多々あるけれども、これまでのようにそれらの課題を部落差別の歴史性・社会性に照らして部落に特化した要求として組み立てられないのである。「提言」が示唆されているように、またまた実態調査をして周辺地域とのあらたな較差探しをするしかないのか。うんざりだ。
 C、昨年、わが同盟県連は約80名の県理事レベルの活動家を対象に意識調査を試みた。“今後の部落問題のとりくみで、あなたが関心をもっているとりくみの傾向は?”との設問に42名が(複数も可)回答した結果である。
  〜これまでの「答申」路線を継承し、内外の格差を取り上げて行政責任を追及(10名)
  〜様々な差別や人権侵害のなかに部落問題を位置づけ、教育・啓発活動中心(16名)
  〜差別や人権侵害に「異議申し立て」をしあえる人権文化を!(22名)
  〜差別や人権侵害を歴史的に探求していくサークル活動(5名)
  〜子育て支援・障害者支援・高齢者支援等の活動で、部落内外の人々の「響きあい・重なり合う」感性の広がりと深まりを!(29名)
  〜生活保護・一人親家庭・ニュウカマー・フリーター等々の先頭に立ってこれまでの行政闘争の経験をいかしていく(16名)
  〜その他(3名)
ここで示されている意思は、あえて部落解放云々を言い張る必要がないということ。差別を媒介にした関係を変えていこうとするとき、部落内外の地域に共通する課題を部落内外の人々が共同で汗を流し課題の解決に向き合うしかないのでは。さすれば部落解放同盟に居場所はない。部落大衆にとって必要とされない部落解放同盟などは潔く解体するしかない。今後の差別や人権侵害のとりくみに全国水平社創立以来86年に及ぶ試行錯誤をも含めた豊かな経験が活かされることこそが大事にされねばならないのではと思う。
 

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